家を出て一年経った

ふと気付いたら家を出てひとりで暮らし始めて一年が経っていた。
あっという間だったなー、住み始めて早々にHeadsUpハウスに問題がある事が分かり、先の見えない手続きと工事、役所とのやり取りがあって、それらが全て片付いたのが昨日の事。ほぼ一年がかり。精神的プレッシャーもすごかったし金もたくさんかかった。何事もすんなりとはいかないもんだね。
ともだちの倉庫にバイクを移動したりしていたのはこの為だった。

と言っても、家そのものに不具合があった訳ではなく、ちょっと難しい話だから簡単に書くと、僕は仕事柄営業所の場所に変更があった場合、その旨を所轄の省庁に申請して認可をもらわなければならないんだけど、その認可を得る作業が滅茶苦茶大変だったという事。
もうちょっとだけ書くと、所轄の認可を得る為には市の許可が必要で、それが大変だった。その手の許可申請に強い行政書士の先生を見つけて、懇意にしている工務店とタッグを組んでもらい市と交渉してもらう。
何しろ築50年近い家だ、その歴史の間にちゃんと建築確認を得ないで増築された木造の物置や軒があって、まずそれを壊さなければならないと。はあ、仕方ないですね。と工務店に見積もりを取ってもらう。げ、こんなにかかるのか、参るなあ。

市の要求は何故か一度に来ず、何度かに分けてやってきた。気に入っていたサンルームも一度解体しろ、便利だった風除室も解体、最後は設置したばかりのカーポートも解体しろ、と。
一旦形だけでも家を出てもらわないと許可は出せないと言われ、レオパレスを借りて住所を移したりもした。
それには市の方にも正当な言い分があるんだけど、要求を受けるたびに工務店が見積もりを作り直し、工賃は増えていく。しかもそれだけやっても許可を得られるかどうかは分からない。それが去年の末から年始にかけて。先の見えない不安に押しつぶされそうだった。




工事は3月からやったんだったかな、それが終わり市の検査が入り、その後審査があった。
審査が通ったという連絡を行政書士の先生から頂いたのが6月末。ほんとうに嬉しかった。その後カーポート等をきちんと建築確認を取った上で復元する工事をして、それが全て終わったのが昨日。もう感慨無量だった。

ちなみにハラハラは尽きる事がなく続き、6月に市の許可が出た時点で所轄に営業所移転の認可申請をだしたんだけど、通常2週間くらいで降りるはずの認可が待てど暮らせど降りてこない。嫌な汗をかきながら恐る恐る所轄に進捗を確認してみると「担当者が体調不良で休んでいる」と。身体中の力が抜けた。
電話から3日後に認可が降りた旨の連絡があった。申請から1ヶ月半以上かかった。蕎麦屋の出前かよ。
心底、金輪際公務員とは仕事をしたくない、と思った。

時間もだけど、金もかかった。申告を頼んでいる会計事務所に確認したら、今回の顛末にかかった費用は100%経費になると言ってもらえたのがせめてもの救いだった。

親身になって市役所と粘り強く折衝をしてくれた行政書士の先生と工務店の営業と建築士がいなかったらとてもここまで来られなかったと思う。本当にありがたかった。




家の裏手にあった物置を取り壊したスペースが空いたのでバイク置き場を作ってもらった。せっかくなので復元するだけじゃなく少しでも住みやすく、ね。





6月に市の許可が降りた時点で8割方勝負はついたので、何かお祝いをしたいと思った。以前からいつかやりたかったオーディオシステムを組むことにした。家でのひとり時間を充実させる為にいい投資だと思ったから。




以前からの計画通り、アンプはサンスイの往年の名機、AU-D907を選んだ。’80年代のアンプなので当然新品では買えず、中古を探した。
ヤフオクに出品されているヴィンテージ・オーディオは8割が動作未確認のゴミだけど、丁寧に探すとトランジスタやコンデンサといった消耗品を交換して修理し、実働品として売られているものを見つけられる。僕が今回買ったのもそういう出品物だった。スイッチ類やボリュームからのガリ音も一切ない正常動作品。今回のシステムの心臓部だね。
出力は100w×100w。電源を入れると部屋の蛍光灯が一瞬暗くなる。電気喰いそうだね。
この頃のハイエンドのアンプらしく、レコードプレイヤーは2台繋げるし、スピーカーも2セット鳴らせる。





考えれば当然なんだけど、このアンプのインプットセレクタにはCDがない。このアンプが売られていた時代にはCDはまだ無かったのだ。そんなスーパーアナログなアンプに繋ぐ音源は、レコードプレイヤーとパソコン。プレイヤーは普通にPhono端子に繋げばいいけど、パソコンはそのままは繋がらない。DAC(デジタル・アナログ・コンバーター)という装置を介して、パソコンのUSB端子から出力されたデジタル信号をアナログに変換して、RCAピンで出力してアンプと接続する。これで(ハイレゾ)ロスレス音源をデジタル入力がない昔のアンプで鳴らす事が出来るようになる。

このDAC、調べてみると安いものは数千円から、高いものになると20~30万円するものまでピンキリだ。更に調べると、3~4万円くらいの価格帯のものがコストと性能のバランスが取れていていいらしい。試聴も出来ないからクチコミで評判の良かったFiiOというメーカーのFIO-K7というモデルを選んだ。

ちなみにプレイヤーを載せている台は自作です。




これはちょっと余計だったんだけど、アンプを探している時にふと昔から欲しかったスピーカーを検索してみたら、修理済み品が信じられない価格で出品されていた。
JBLのJ620というモデルで、当時ペアで3万円くらいで売られていたらしい。JBLのエントリーモデルだね。
古いスピーカーは大抵ウーファーの縁のクロスがボロボロになっているんだけど、僕が買ったものはそれが丁寧に張り替えられて正常動作品として出品されていた。それがなんでこの値段?と思って説明文を読んでみたら、数十年家電修理マンとして働いていた72歳の出品者がその技術を活かし、半ば趣味として採算度外視で出品しているものだった。
梱包もメッセージでのやり取りもものすごく丁寧で、世知辛いネットの世界でもこういう出会いってあるんだなあと感動した。これもスピーカーラックを自作して壁に取り付けた。

こうしてアナログとデジタルがいい感じにミックスされているシステムが出来上がった。ものすごく心地いい音がする。スピーカーは2セット繋げるアンプなので今まで使っていたBOSEの301も鳴らせるのだけど、JBLでばかり聴いている。




そんな心地いい音を聴きながら本を読む夜は至福。
最近読んだ本は当たりが多かったけど、これがダントツで面白かった。鴻上尚史「ベター・ハーフ」。鴻上さんの文章は、大好きなWeb連載の、全然ほがらかじゃない「ほがらか人生相談」をはじめ、本も何冊も読んだけど、小説は初。図書館で手に取って面白さのあまり一気読みして、それでも物足りなくて単行本を買って繰り返し読んだ。
男女4人の、まあ恋愛をベースにした物語なんだけど、主題は恐らく「生きる喜びと苦しみ」。人生の苦さややるせなさがしっかりと描かれているのがいい。恋と夢と性とトラウマとコンプレックスとetcetc…。生き物なんて本当はただ生きて死ぬだけなのに、人間は、人生はどうしてこうも厄介なのか。そんな事に想いを馳せるにはもってこいの本です。
あまりに面白過ぎて、新刊の「愛媛県新居浜市上原一丁目三番地」も速攻読破、昨日「八月の犬は二度吠える」が届いたところです。

そんな鴻上さんも割と最近離婚していたという事を著書の中で知った。詳しい事情は分からないけれど、家を出る前数年間はほとんど会話らしい会話もなかった、と。
氏のような人生の達人みたいな人でも離婚になるんだね。鴻上さんには少し申し訳ないけれど、少し気が楽になった。




さて、長くなったけど一人暮らしはどうか。
まあ気楽だね。満喫しています。家を出た時に感じたとおり、まだ体力があるうちに行動しておいて本当に良かった。
HeadsUpハウスは暑くて寒いけど快適だ。家ってただの物体じゃなく、衣食住って言うくらい生活の基礎になるものなんだと思う。帰ってくる場所があるから旅にも出られるというか。
夜、ひとりで酒を飲みながらのんびりすると家族で暮らしていた頃は考えなかった色んな事を考える。自分とゆっくりと向き合えるんだね。ふと昔の事を思い出して、あの時相手はこんな気持ちだったのかなあなんて改めて気付いたり。
色々失敗もしてきたなあ、謝れるものなら謝りたいけど、もうそんな機会もないんだろうね。

それこそ自由だし、ガールフレンドくらい欲しいななんて思っていた時期もあるけど、今はひとりの方がいいな。もう少ししっかりと自分と向き合うべき時期なんだろうと考えている。

新しく始めた事、再びやり始めた事、以前から続けている事もあるし、これからやってみたい事もある。今ね、苦手だったテレビを克服しようと思っている。バラエティは苦手だけど、スポーツ観戦とか面白そうだよね。あと落語とか。




カーポートも復旧したので、今年あまり出来なかったバイクいじりもそろそろ再開したいな。ET3、だいぶくたびれてきたんで、あちこち手を入れなければならないところがあるのだ。

そんな感じでひとり暮らしも2年目です。






海外のインスタはイリーガルなものだらけで面白い。これめっちゃカッコよかったな、バイクのチームが100km/hを優に超す速度差でブチ抜かれて、スクランブル加速して追いかける。マンガ「AKIRA」を彷彿とさせる世紀末感。痺れる。








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