紳士とパンク

朝起きて、寝室から階下のリビングに降りてきても一言の挨拶もない、なんならその後の会話も一切ない空気に耐え切れず、昼飯要らないから、の言葉だけ残して微妙な天気の中隣町までランチランする事に。

というか、今週の天気予報を見るとぼちぼち雪マークが出てきてるんだよね。今年の冬は寒いという噂もあるし、乗れるうちに乗っとこう、という焦りもあった。


予報では終日曇りで、家を出ようとした時には雨は降っていなかったが路面は濡れている。隣町の目当ての店までは約40km、んー何に乗っていくか、パイセンだな、って事でエンジンを掛けて走り出す。スクーターは濡れた路面を走っても足元が汚れないんだよね、こういう面でもシティコミューターとしては優れた乗り物だって事を実感する。

Pパイセン、キャブを換えてからホント絶好調で、10日くらいエンジンを掛けないでいても2.3回のキックであっさりとエンジンが掛かる。
実走行だと思われるオドメーターは今日の時点で5700km。心配なのはクランク周りのシール類だけど、それも抜けた時点で対策考えればいいや、と気楽に構えている。現時点では不具合一切無いからね。


が、いつものスタンドで給油して南に向けて10kmくらい走ったところで結構な勢いの雨に当たる。げ、マジか。
上着はECWCS(ゴアテックス素材の厚手のパーカー)だし、下半身はパイセンのレッグシールドに守られてそんな濡れてないけど、この時期にこの勢いの雨はちょっとキツい。たまらずコンビニの軒下に避難。タバコを吸いながら様子を見る事に。




雲、そんなに厚くないんだけど雨は止まない。家に戻ってレインウェアを着て再出発する?そこまでするほどのランでもないよなあ、どうしよう。




西の山の方の空は暗い。よし、隣町まで行くのはやめた。勇気ある撤退。
現在地から割と近くにあるラーメン屋で食って帰ろう。




久しぶりの青南蛮ラーメン。そんなに辛そうに見えないけどこれがなかなかのもので、不用意にスープをすすると咳き込むくらい辛い。
濡れて冷えた身体も暖まりました。









紳士という言葉を広辞苑で引くと、品格があって礼儀にあつい人、となる。紳士協定という言葉もあって、それは互いに相手を信頼して結ぶ取り決め、という意味らしい。

流石に歳も50を過ぎると無意味に尖る事に疲れてくる、というか、紳士協定の下で交わすやり取りの楽さ加減が身に染みる。主に他人とコミュニケーションを取る場合においての話ね。
やり取りをする上で、人として最低限の約束は守りますよ、という体で人と接した方が圧倒的に楽なのだ。これは今現在置かれている環境だったり、年齢に依るところも大きいと思うんだけど。
そろそろこういう面では楽してもいいでしょう、というか、こんな事50歳で学ぶ事じゃないのかな、逆に言うと。

僕の場合、髪も長いしオフの時は耳にでっかいピアスをみっつもぶら下げているから、初対面でその辺の信頼を勝ち得るのは結構難しいんだけど、その辺の勘所が身体で分かってきたのか、特に仕事で独立した辺りからかなあ、ルックスでひどく誤解されたままって事は少なくなった気もする。

いや、オフの日の僕は決して上品な紳士ではないけどね、マインドも子供だし、くっだらない事大好きだし。そもそも髪切れよ、って話だし。
こないだ最近仲良しのデザイナーT氏と初めて飲んだんだけど、会話の8割はディープな下ネタだったしな。おっさん二人で最っ低ーな話題でゲラゲラ笑い転げてたら周りから人がいなくなっていった記憶がおぼろげにある。
ね、紳士じゃないでしょ?

でも、なんと言えばいいのか、僕だって人としてひん曲がってる訳じゃ決してないから(多少人生をこじらせてはいるけど)、それを意識して前面に出していけば嫌な思いする事も少なくなったというか。
そういやT氏にも「ヨコチンさんって意外と情に厚いですよね?もっとドライな人かと思った」って言われたっけ。そうですよ、つーかオレから情を取ったら何も残らないですよ、って答えておいたけど。



そう、紳士。
アメリカでは大統領選挙があって、どうやら民主党のバイデン氏が選ばれた様だ。良かった。
トランプ前大統領は、紳士という言葉からは徹頭徹尾かけ離れた人だった。品格なんて欠片も無かったしね。それが見た目や上部だけのものじゃないという事を4年間かけて世界中の人が思い知ったんじゃないかと思う。
いや、別にそういう人がいてもいいと思う、どういうマインドで生きようがそれはその人の勝手なので。堀江貴文みたいな人が日本にもいるけど、そういう下品な人とは一切コミットしなければいいだけの話なんでね。

問題だったのは、それが大国の大統領だった、って事。その一点で僕はトランプ前大統領の事が嫌いだった。
紳士協定の第一義は、広辞苑によると「公式の手続を経ずに結ぶ国際協定。法的拘束力を持たない」である。相手の事を、相手の品格を認め合って信頼し合って国同士で結ぶ約束という意味だと思うんだけど、あんな相手と紳士協定を結ぶ国なんてないよね絶対。核のボタンを24時間携帯する立場にある人だから表面上はツラッと付き合ってたと思うけど。
あ、ウチの国は随分色々押し付けられたっけな、戦闘機とかミサイルとか。



でも人間って業が深いというか難しいなあって思うのは、今回の選挙でも国を2分する勢いで表が割れたという事。トランプがどういう層にどういう理由で支持されたのか、それはそれぞれなんだろうけど、耳に入ってくる支持者のとんがった部分から推察するに「どうせお前も欲と金なんだろう?本音で生きろよ」と考えている人たちの本性を解放したのかな、という気がしてる。
劣勢に立たされている地区の開票所の襲撃を企てて逮捕(!)とかいうニュースも複数見たし、不正選挙だと邪推しての抗議集会にアサルトライフルを持って参加したり。こうなると品格云々のレベルじゃなくもう人間としてマトモじゃない。
そういう人間が持つ邪気を解き放っちゃったって意味でもあの人は罪深いな。これからあの国は大変なんだろうなあ。


建前って大事だと思うんだけどね、僕は。人間なんだから。人間だからこそ。僕だって欲もあればお金だって大事だ。でもそれ以上に人として死ぬまで成長し続けていきたいなあと思うし。
つかそれは、それが建前じゃなくて本音だな。それが僕の生きていく上での矜恃だし気概かなあ、気高い人への憧れはずうっとあるしね。









Punk、という単語を英和辞典で引くと、どの辞書でも今は一番上にパンクロックの事が書かれているのね。それはそれで妙に感慨深いけど、パンクという単語は本来は、安っぽい不良とかチンピラ、悪ガキ、という意味で使われていた(今も使われている)。
洋画の音声をよく聞いていると、パンクロックとはまるで関係ない文脈で割と頻繁に使われている単語です。

そう考えると、パンクロックって絶妙なネーミングセンスだよね、名付け親誰なんだろう??安っぽいロック、チンピラが演奏するロック、それは結果的にエッジの効いた、ラウドでイカす楽曲をたくさん作ったし今もまだ生まれ続けている。
あまりこういう語り口で話したくないんだけど、1976年に生まれたその精神は今もいろんな分野で脈々と引き継がれてると思う。ああ、やっぱり文字にすると限りなくダサい、でもそれは事実なんだ。音楽のジャンルとしては全然違うけど、パンクがなかったらHipHopも生まれてなかったとすら思う。

僕は音楽はほぼオールジャンルで聴く。でもそれって「どんな音楽好きなの?」って質問に答えるのすごいめんどくさいんだよね、だからそう聞かれた時、パンクが好き、って答えてた時期があって、どうも周りから、ヨコチンはパンク好きだと思われてるフシがあって。

いやー、それはソリッドでラウドな音楽も好きだって意味だったんだよなーって、ちょっと雑な返答をした事を今は少し後悔してるんだけど。まあパンクも好きなんだけどね。


でも、本来のパンクって単語の意味は大好き。昔も書いたけど、心優しきロクデナシになるのが一時期の目標だったし。
ロクデナシはそろそろいいかな、でもエッジは無くしたくないなあ、つかパンクな紳士ってカッコいいよね、チンピラ紳士、ダメかな?言っとくが髪なら切らねえぞ。






昔、The Only Onesってパンクバンドがいて、その曲をヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーションってユニットがカヴァーしてる貴重な映像。

本家を凌駕するカヴァーって結構あるんだけどこのテイクもそのひとつだね、演奏はタイトでスリリング、その上でめちゃくちゃパンク。カッコいいー。

演奏がいいのは当たり前で、メンバーはHeatwaveからふたり、ソウルフラワーユニオンからふたり。日本が誇るゴリゴリの叩き上げのロックミュージシャンなんだから。本当に楽しそうにトレードマークのカントリー・ジェントルマンを腰ダメで弾きまくっているのは我らがHeatwave山口洋。ホントカッコいいギター弾くよなー。

その極めてプロフェッショナルな演奏を奇跡的なまでにパンクロックの位置に押し下げているのが、ヴォーカルを取っている渡辺圭一(ex. Heatwave)。高校の文化祭レベルのオーラと歌唱力の歌と、酷いセンスの髪型とファッション。何故ボーリングシャツのボタンを全部外しているのか。意味が分からない。
もっと言えば、ギターソロの最中に叫ぶ「あーーー!!!」というシャウトと、ラストの「センキュー!!!」。サンキューじゃなくてセンキューだからね、まさにパンクそのもの。たまらん。何度観ても飽きない。

圭一さんのベース、好きだったんだけどなー、なんでHeatwave抜けちゃったんだろう。あ、一応フォローしとくと圭一さんのベースはめっちゃカッコいいです、酷いのは歌とファッションセn(もういい)。






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