2026夏 出羽三山を巡る旅 2日目

2日目の朝は6時に起き、6:30分からのホテルの朝食を食べ、7:30分に出発する。この日は初めて湯殿山神社に行く日だ。
出羽三山への巡礼は、生まれ変わりの旅とも呼ばれる。羽黒山神社は現在を司り、現世の穢れを祓う場所、月山神社は過去を司り、擬似的に一度「死に」、過去を見つめ直す場所、湯殿山神社は来世を司り、祓った現在と過去の穢れを洗い流し、新たに生まれ変わる場所とされていて、ゆえに参拝する順序は羽黒山、月山、湯殿山の順番になる。
今でも多くいる山伏たちはこの順路で参拝し、修験道を実践している。

前回の記事でも書いた通り今回は時間的にも月山神社への参拝は出来なかったが、チートって訳でもないそうなんだけど、羽黒山神社には三神合祭殿という羽黒山、月山、湯殿山の神様が一緒に祀られている社殿があり、そこへの参拝をもって三山を巡ったのと同じご利益を得られるとされているのだだそうだ。
これには大きくふたつの理由があるそうだ。ひとつは月山神社、湯殿山神社は参拝出来る期間が、山岳地にある神社のため非常に短く、年間を通して参拝出来る羽黒山に三神合祭殿を設けたらしい。
また湯殿山神社は、明治になるまで女人禁制だったらしく、女性にも門戸を開くという意味合いもあるのだそうだ。
ちなみに山伏たちによる秋の嶺入りという行事は今でも男性しか参加できないそう。女人禁制とか今じゃ普通には考えられないけど、この辺にも山岳信仰の歴史の長さを感じられたりもするね。


鶴岡市内でガソリンを満タンにして(燃費はおおよそ25km /lだった)国道112号線を走り湯殿山神社を目指す。40分くらい走って国道を左に折れ、山に中に入っていく。




細い山道を10分くらい走って湯殿山神社の鳥居に着く。
ここから先の写真は残念ながらない。鳥居をくぐった後は撮影厳禁、それどころか、神社で見たり経験した事は他人に話してはいけない「語るなかれ、聞くなかれ」という掟があり、もちろん文章にも書いてはいけない。
かの松尾芭蕉も出羽三山を訪れたそうなのだけど、湯殿山神社を参拝した時に詠んだとされる「語られぬ 湯殿にぬらす たもとかな」という句にはそんな意味合いが込められているのだそう。
ちなみに芭蕉の有名な句「五月雨を 集めて早し 最上川」という句は、出羽三山を参拝する際に最上川を舟下りした経験を詠んだ句なのだそうだ。おくのほそ道だね。




麓には駐車場があり、そこにバイクを停める。




ここから御神体を参拝するには少し距離があり、バスが30分おきくらいに出ている。僕はバスを利用したけど乗っている時間は5.6分だったから歩いても行ける距離だね。実際歩いている人も多かったが、休憩所では熊にはくれぐれも注意するようにという注意喚起の放送が流されていた。


掟があるため書けないが、御神体との対面は、とても不思議な、得難い体験だった。それはお参りというよりは文字通り「体験」で、今まで参拝した神社のそれとは全く異なっていた。アミニズム(精霊信仰)というものをこれほど体現している場所は日本でも稀有なんじゃないだろうか。


素晴らしい体験を終えて山を降りる。僕が漠然と神社仏閣に求めていたものがここにはあった。この場所には定期的に来よう。




その後国道112号線に戻り、寒河江方面を目指す。久しぶりに走った112号はペースも速く景色もいい最高の道路だった。
寒河江の手前から新庄方面に国道458号線という3桁国道が走っており、地図で見るとなかなかの酷道っぽかった。せっかく軽いバイクで来ているのだからそういう道も走りたいよねって事で予定していたのだけど、入ってすぐに「この先通行止め、迂回路なし」との看板が。久しぶりの酷道を結構楽しみにしていたからかなり残念だった。この暑さの中、退屈な国道13号を走るのかー。まあ仕方ない。


出羽三山は山岳信仰の聖地で、今でも山伏たちが修行しているという事は前にも書いたけど、ひとつ非常に気になったルールについて書く。
修行には先達と呼ばれるリーダーが必ず付くのだそうなのだけど、山伏たちは修行中は先達の指令に対し「うけたもう」以外の言葉を発してはならないのだそうだ。
それにはいくつか意味があるらしいのだけど、山伏たちは大自然の中を修行しながら自然の厳しい試練を経験する。それを拒絶するのではなく、全てを受け入れる姿勢が「うけたもう(承りました)」という言葉になって現れてくるということなのだそうだ。

この事はドンピシャに心に刺さった。ここ1.2年、バイクと自然についてずうっと考えていた。何故バイクが好きなのか。何故バイクに乗って旅をするのか。そんな事を考えながら、忙しい仕事の合間を縫って時間を作り旅をしてきた。その答えのひとつがこの言葉に集約されている気がした。
暑いし寒い、転んだら痛い。そんな不完全な乗り物に乗って長い距離を走るということ。それが楽しいばかりじゃないということはそれこそここ1.2年何度もここに書いてきた。うけたもう、という言葉以外発してはならないというルールとその理由を知った時、僕はバイクと自然に学ばさせてもらっていたんだな、っていう事に気づいたのだ。

この事は今に始まった事ではなく、若い頃からずっと考えていた。何故辛い思いをしてまで走るのか。時間やお金、気力体力を使ってまで旅に出るのか。自分でもずっと不思議だった。
僕は今年でバイクに乗り始めてちょうど40年になる。その節目の年に、ずっと乗り続けてきた意味に少しだけ気付けた気がした。40年かけて張った伏線を回収した気分。スッとしたな。




信号ばかりであまり走った甲斐がない国道13号に出て北進する。
この旅で被ったメットはアライのXV-IV。オフを走るためにちゃんとしたメットが欲しいなと思い春先に買ったメットだ。ベンチレーション機能が素晴らしく、大変快適だった。ただ、ゴーグルが眼鏡と合わず、長距離だと鼻先が痛くなるので途中からはゴーグルは外して走った。ゴーグルを買い替えるか、バイク用のメガネを作るかしなきゃだな。




足元はいつものジーンズに、ガエルネのエンデューロブーツ。僕が初めて買ったバイク専用のブーツだ。
オフロードを走るにはそれなりの装備がいるからね、山の中での怪我は命に関わる。
エンデューロブーツは底がタンク底になっているしモトクロスブーツよりは柔らかいので、そんなに長距離じゃなければ歩くのも苦ではない。




それほど酷暑って訳でもなかったが湿度が高くてなかなかに不快な気候の中、景色も変わり映えのしない国道13号を、うけたもうという言葉を何度も呟きながら新庄市まで戻ってきた。前日に見かけて気になっていた蕎麦屋で遅めの昼食を摂る。




これも山形名物、冷たい肉そば。美味しゅうございました。




時間も押していたので、新庄市からは13号と並走する自動車専用道路を走った。明日からまた仕事だ、体力を使い果たす訳にはいかない。
汗に濡れたジーンズのウェストが湿っていて不快だし、シート幅が狭いからかケツが痛くなってきたが、それも「うけたもう」。家まであと2時間ちょい、ラストスパートだ。




コンビニで休憩していたら道路標識が近くにあったので写真を撮る。ん?なんか見覚えがある看板だなあ。




やっぱり!スマホの画像フォルダを探してみたら数年前に同じ場所で休憩していたみたいだ。
独立して、何年振りかで一泊二日の旅に出た時の事だ。




この記事だね。2019年だからもう7年前になるのか、思えば遠くにきまもんだ。




17時頃無事帰宅。この日の走行距離343km、総走行距離598km。よく走ったね、お疲れ様。ちなみに343km無給油で走れた。しかもタンクを覗くとリザーブまでまだ余裕がある。XRは足長だね。
荷解きしてシャワーを浴びる。首元の日焼けやジーンズやブーツに擦れた皮膚がお湯に染みて痛い。でもそれも心地いい。ヘトヘトだったけどね。
本当に、ほんとうにいい旅だった。また明日から日常という名の戦場で暮らす訳だけど、多分この旅の前とは少し違う日々を過ごせるんじゃないかな、そんな予感がした。




この記事を書くにあたり参考にさせて頂いた本です。いい本でした。




Hey Brother & Sister 君はどうだい?









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