
今年の盆ツーリングも2日目。昨日ちょっと多めに晩酌したが、5:30分にセットした目覚ましでバッチリ眼を覚ます。今日は下道オンリーで300km弱走る、一番ハードな1日だ。
ルートは、宿泊した米沢市を出発して国道113号を西進して新潟県の村上市に出て、海沿いを秋田市まで一気に北上する。晴れていれば景色は見事なはずだけど、天気予報は曇り。しかも村上市の辺りで雨に降られる予報。
新潟県村上市から山形県鶴岡市までの海沿いの道路、通称笹川流れは景色が見事で、山形に住んでいた学生時代何度も走った記憶がある。水平線に沈む夕日も何度か見た(結構見るの難しい)。
が、ここ数年ここを走る時は毎回雨で、ひどい時は強風に吹かれた波が道路まで飛沫をあげるという大荒れの天気だった。
この日だけはカンカン照りの晴れが良かったんだけどそう上手くはいかないようだ。まあそれもまた旅。好きで走りに来ているのだ、誰かが悪い訳ではない。

が、ホテルのフロントで清算を済ませ外に出るともう既に雨が降っている。これは予想外。聞いてないよ!とダチョウの竜ちゃんみたいに心の中で呟く。昨夜ベッドに入った時は米沢市は曇り予報だったのに。
ホテルの玄関先でレインウェアとブーツカバーを身に付ける。カッパ着てバイクに乗るのなんて何年ぶりだろう。

6:30分、ホテルを出発。最寄りのコンビニで朝食がわりのウィーダーインゼリーと水を購入、水は新兵器のワークマン製ペットボトルクーラーにセットする。
さて、行きますか。
雨は小降りだったんだけど時々本降りになる。メットは敢えてオープンフェイスのジェットヘルで走った。それこそシールド付きのフルフェイスも持ってきているのだからそっちの方が快適で安全なんだろうけど、何故かそういう気分じゃなかった。たまには雨に打たれるのもいいよ。
雨の日のバイクは、装備さえしっかりしていればそれほど苦痛じゃない。けど危険度はグッと増す。視界が悪くなるし、路面も滑りやすくなる。道路上の白線やマンホールにタイヤが乗るとめっちゃ滑るから慎重にライン取りをしながら走る。
米沢市から村上市に抜ける国道113号は通称小国峠と呼ばれる峠道で、カーブも連続すればたくさんの橋も越える。橋には鉄製の継ぎ目があって、そこでラフなアクセルワークをすればリアタイヤがツイっと滑る。滑るのは継ぎ目の部分だけだからそれで転ぶとかはないんだけど、ちょっと緊張はするよね。
こういうのも好きで走ってるんだから仕方ないよね。誰が悪い訳でもない。
時々バックミラーに自分の顔が映る。水も滴るなんとやらじゃないけど、雨に濡れながら決して楽じゃない状況を淡々とこなしているうちになかなかいい顔に仕上がってきた。自分で言うのもなんだけどね。
そんなに辛い訳じゃないけど快適でもないコンディション。なんでこんな事してるんだろうという思いが頭を掠めるが、そんな問いの答えはひとつしかない。バイクに乗るのが好きだから。好きな事をやっているのに、誰かや何かに文句を言える筋合いじゃないよね。
でもやっぱり楽ではないし、気持ち良くもないんだ笑、正直に言うとね。でも、仙台に行った時の記事にも書いたけど、だから旅は楽しいんだと思う。避けられない風雨を乗り越えなければ目的地には辿り着けない。それには工夫も必要だし忍耐力も必要だ。バックミラーに映る自分の顔にはそういう状況を受け入れた上でそれを乗り越えるんだという意志が見てとれた。
誰かが言ってたよ、Motorcycle makes a Man、って。オートバイが人間を育てる、って。誰にでも優しい奴は誰にだって厳しい。もちろん自分に対しても。僕はまだまだその境地には達してないけど、少しでも近くに進みたいな、とはいつも思ってる。

雨の中をひた走り、村上市に着いた。この頃には雨はだいぶ小降りになっていた。
ハーレーの燃費は意外といい。僕のFXRで18~20km/lくらい。エンジンはノーマル(ハイカム入ってる疑惑あり)、S&SのEキャブにマフラー、一般的な仕様です。国産4気筒の大型バイクの燃費は10km/l台前半だって聞くからなかなかいい数字だよね。入れるガソリンはハイオクだけど。
これが長旅だと地味に助かる。タンクの大きさも相まって(リザーブに入ってからの給油で14Lくらい入る)満タンで300kmくらい走れる。
まあまあ荷物も積めるしポジションも楽、ラバーマウントのエンジンのおかげで振動も角が取れていて手が痺れる事もない。いい旅バイクだよ。

笹川流れに着いた。天気はまだ小雨、空は写真の通りの曇り空。夏の笹川流れは晴れていれば絶景なんだけど仕方ない。ちょっと残念だけど、いいさまた来よう。

こんな海岸線を何10kmも走るんだから楽しくない訳がない。

時間を確認するとスケジュール的には全然余裕がある。景色を噛み締めるようにゆっくりと走るか。
雨を押してオープンフェイスのヘルメットを被ってて良かった、自然が発するヴァイブスを思う存分感じられる。メットにシールドが無ければ当たり前だけど顔面は濡れる。本降りになれば痛いくらいだ。でもさ、それが本来なんじゃないのかな。晴れていれば日差しが当たり、雨が降れば雨粒が当たる。自然の中を走っているんだから、考えてみれば当たり前の話だよね。
お陰で顔はAV男優みたいに真っ黒に日焼けしてしまったけど。笑
写真を撮る為にポケットから携帯を出したら、友達から旅の安全を願うLINEが入っていた。ありがとう無事に走り切るよ。

何度か休憩しながら国道345号線を走り切り、国道7号線に入る。酒田市の辺りでようやく雨が止んだ。休憩がてらカッパを脱ぐ。この爽快感、たまらないっす。Tシャツにアームカバー、ジーンズにブーツといういつもの格好にやっと戻れた。
時間はそろそろ昼、そんなに腹は減ってないけど、旅に出て以来(出発前に食中毒になったからもっと前から)マトモな食事をしていない。何かしっかりと食べないと身体が持たないな。

7号線沿いにあったラーメン屋で味噌ラーメンを食べる。ラーメンがちゃんとした食事なのかはさておき、塩分が身体中に染み渡る。旨い。
タバコを一服して目的地の秋田市を目指しまた走り出す。あと100km、休憩しながらだと3時間弱くらいか、炭水化物を摂ったから眠気が出ないといいな。
酒田市は庄内平野のほぼ真ん中に位置する海沿いの街だ。庄内平野は国内有数の米どころで、山が遠いからか空が広い。僕が住んでいる岩手県は内陸は盆地だし沿岸はリアス式海岸だから、こういう空の広さはなかなか感じられない。
田んぼの真ん中の、道幅の広い真っ直ぐな道を走るのは新鮮で楽しい。ああ旅に出てるんだなあ、という気分に浸れる。お盆前半の国道の流れは速くなったり遅くなったり。他県ナンバーも目立つし、運転に慣れていないドライバーも多いのだろう。
空は時々日差しも出てきて気温も上がってきた。水分を多めに補給して熱中症には十分に気をつけて走る。

国道7号線はそのうち海に近付き、また海沿いを走る。右側には鳥海山の麓が見えてきたが、山頂は雲の中だ。鳥海山はある程度の高さまで車やバイクで登れるのだけど、時間や体力、天候を考えてこの日は通過する事にした。いつか時間を取ってまた訪れよう。
休憩の為立ち寄ったコンビニで水を飲みながら一服していたら波の音が聞こえた。建物の裏に回ってみたら日本海が見えた。水平線の向こうは世界一広いユーラシア大陸だ。
昨日家を出発してからずいぶん走った様に思うが、地球規模で見ればそんなのは鼻くそみたいな距離で、世界はもっともっと広い。
日本だって小さい島国の様でいて意外に広く、まだまだ行った事のない土地や走った事のない道がたくさんある。そんな場所に行ってみたいと心から思う。
さすらいもしないでこのまま死なねえぞ。

砂浜にはこの時期の日本海らしい穏やかな波が打ち寄せていた。いいねぇ。

その後何度か休憩しながら、無事宿泊予定のホテルに辿り着く。ホテルの駐輪場には僕より少し先に着いたらしいリジッドのショベルが2台いて、旅の荷物を下ろしていた。駐輪場に向かう僕とFXRを出迎えてくれ、あれ〜どこかで会いましたよね?と話しかけられる。
うん、7号線沿いのコンビニに停まってるの見ましたよ、と返すと、ああそうだそうだ、としばし話になる。
2台のショベルをよく見ると、2台とも10インチオーバーのガーターフォークにフロントブレーキレス、ジョッキーシフトのスーサイドセットアップだ。コンビニで見かけた時はまさかこれで旅をしているのだとは思わず、地元のバイクだと思ったんだけど、聞けばなんと千葉県から来ている由。本当にすげえ。
ご夫婦なのか男女二人組で、いやいややはりハーレーの世界には凄い人がたくさんいるもんだ。お幾つなのか存じ上げませんが、兄さん姐さんと呼ばせてください。
ふう、この日も無事に走り切った。晴れ、曇り、雨と全ての天候も堪能出来たいい1日だった。この日の走行距離294km。

ホテルは東北有数の歓楽街、川反のど真ん中にあって、シャワーを浴びてからまあ当然夜の街に繰り出すよね、ところが帰省組の若者や観光客でいっぱいで入れる店がない。
小一時間ウロウロしたけどどの店でも断られ、結局コンビニで弁当とビールを一本だけ買ってホテルの部屋で寂しく一人で食べた。
まあこういう夜もあるさ。後になればそれもまた旅の思い出になるのだろう。
いいねぇ〜グッドバイブレーション!!
無事に帰ってきたようでよかったです。
小国峠といえば学生時代に二人で超えたことを思い出します。
前にバイクで岩手に行った時もそこを通ったんですが、あれからずいぶん時間が経ったので、今はまた違った景色になっているんでしょうね。
東北は見どころが多いので、また走ってみたいです。
お疲れです。
小国峠、越えたねー自転車で!懐かしいな〜
この日の行程はあの時のルートのオマージュだよ、あの時はカンカン照りで自転車はキツかったよな、、、
自然は変わらないんじゃないか、10年20年では。
ただオレらが変わっただろうから、見える景色は昔とは違うかも知れないね。
オレは逆に四国を走りたいよ、仕事柄なかなか長期の休みが取れないから時間的に難しいんだけどさ。
もう1日分、来週にでも記事を書くので読みにきてね!