疫病禍下のバイク趣味

blogの更新の頻度が下がっているのを心配してくれた友達が「何かあったのか?」と連絡をくれた。ありがたい。
いやー、むしろ何もなくてキーボードを叩くテンションにならないんですよね〜と答えたんだけどまさにその通りで、嬉しい事なのか最近悩みがないんですよね、全く。

人の悩みの8割9割は対人関係のものだという話を聞いた事があるけど、僕の決して広いとは言えない交友関係は平和そのものだし、まあこの状況で飲みにも行けないからそもそも以前より人に会う機会自体が減った。仕事もチームを組んで多人数でやる類のものでもないからそもそも対人関係のストレスとは無縁だしね。
それで惚けている、というのが今現在。

酒量のコントロールもいい感じで続いているし、体重も順調に減っている。手元にある3台のバイクやスクーターはどれも調子良く、まあネタを作って記事にしようと思えばそれも出来るんだけどそこまでの覇気もない。

ま、いい事なんだろうけどね。記事にしないまでもSRにも2台のスクーターにもいい感じで乗っているし。土曜に目一杯走って疲れたら日曜は無理せず一日本を読んで過ごす、みたいな、まあ静かな生活を送っています。
blogを読み返すと去年の今頃はET3のエンジン焼き付き騒動でてんやわんやだったんだよな、懐かしい。あの頃のテンションとは真逆だね。




ここに来て全国的に急速に落ち着いてきた疫病の感染状況だけど、ほんの2ヶ月くらい前までは岩手県も危機的な状況だった。人口10万人あたりの感染者数が15人を超え、県知事はかねてからの宣言通り県独自の緊急事態宣言を発出した。まあ型通りの内容で、不要不急の外出や会食は出来るだけ控え、県をまたぐ移動も避けるように、という感じだった。
もう聞き飽きたフレーズだけど結局それが一番の対策でもあるんだよな、もちろん休業補償の問題や、PCR検査を拡充させて施策と組み合わせればもっとストレスなく様々な我慢も出来るのに、などといった素人考えの不満もたくさんあったけど、緊急事態宣言が解除されるまでは僕はバイクでも県外へは出なかった。

これはね、色んな考えがあると思う。例えばひとりでバイクに乗っていたとする。当然誰と会話するわけでもないから罹患する可能性はほぼゼロだ。問題ない。昼食を摂るにしても、あまり混んでない店を選びマスク着用で入店前に消毒をしっかりと、無言でカウンターに座って食べる分にはうつす心配もうつされる心配も極めて少ない。
だから、ひとりでバイクを楽しむに当たっての疫病に関しての危険は、緊急事態宣言を発出するような状況でも県境を越えようが越えまいがほとんど変わらなかったと思う。
それでも僕は、自分の判断としてバイクで県境をまたぐ事はしなかった。それにはみっつの理由がある。



ひとつめ。僕は県内の附属病院のドクターを出張先の病院まで運ぶ仕事をしている。その病院が疫病禍下において発出したステートメントの一つに「職員は県外への移動は極力避けること。どうしても必要のある場合は病院長の許可を得ること」というものがあって、僕が知る限りのドクターや看護師はそれを忠実に守っていた。夏休みの時期だから、前々から旅行の為に結婚したばかりの旦那さんと行くために予約していた宿をキャンセルしたドクターもいたほどだ。
組織人ではない僕自身にはそんなレギュレーションは課されていないんだけど、そういう人たちと一緒に仕事をしている立場としては、僕だけが自由に遊び回っている訳にはいかないなって考えた。この件に関しては一蓮托生だな、って。

そういう心持ちって絶対に仕事ぶりに表れるから。気にする事ないですよ、って仰ってくれた打ち解けているドクターもいたけどね、こんな田舎街では信用はこういう細かいものをを積み重ねていく事でしか得られないんですよ。



ふたつめ。僕と子供たちのワクチン接種が終わっていなかった。それは今もって終わっていないんだけど、娘が受験生なんだよね。それはそれは毎日一生懸命机に向かっていて、罹患することはもちろん、親としてはちょっとの不安を与える事もしたくなかったし、出来なかった。
そう、去年の10月に鉄砲玉のように家を飛び出して仙台に行った時、一番娘に怒られたんだよね。今年それと同じ事をやったらこりゃ一生言われるな、って。もちろん受験勉強に集中することの妨げにはなりたくないしねー。

今週末に僕が、来週息子が、月末に娘自身が2回目の接種を終える。ガチの県外移動はそれから3週間から1ヶ月経ったら考えようかな、って。



みっつめ。僕は北東北の片田舎に住んでいるから。
これは首都圏や西の方に住んでいる人には絶対に分からないと思うんだけど、東北の田舎町には21世紀の現代にも昔のいわゆる「村社会」の空気が色濃く残っている。人の出入りが多い仙台辺りはそうでもないんだけど、北東北3県と山形の、特に内陸部はそれが顕著だ。そして僕も所詮よそ者だから逆にその空気には敏感だ。

映画「イージー・ライダー」では、主人公たちの自由っぷりに嫉妬した田舎者達に寝込みを襲われ、途中から旅に加わっていたジャック・ニコルソン扮する酔いどれ弁護士が撲殺される。だいぶ極端な描写だったけど、アレですよ、田舎者のドグマ。おー怖。

いや、平時ならそんなものに左右されたくないし、人生自由に楽しんだ者勝ちだなって思うけど、今は非常時だ。場合によっては生命を危険に晒すほどの。そんなストレスフルな状況に暮らしていて、他県ナンバーのオートバイが気持ち良さそうに目の前を走っていたらもしかしたらそれだけで気分を害する人もいるかも知れない。おい岩手県は緊急事態宣言出してるじゃないか、とか憤慨する人もいるかも知れない。
それは逆恨みに近いものかも知れないけど、僕の価値観とは相容れないものだとしても、例えそうだとしてもそれは避けたかったのね、非常時だから。クルマならまだしも、バイクは自由な乗り物だからね。

だし、件の病院の「県外に出るな」というステートメントも、半分は実際の感染拡大防止だと思うけど、残り半分は世間体対策だと思ってる。かくも田舎は住みづらい。いいところもたくさんあるんだけどね。




そんな訳で、バイクで県境を跨ぐ事はしばらくしていなかった。念の為断っておくけど、上に書いたみっつの理由はあくまで僕個人の判断であってそれが唯一無二の正しい考えだなんて言うつもりは毛頭ない。どんな考えでどんな判断をしようがそれは個人の自由だし、僕は他県ナンバーのバイクが目の前を走っていても何とも思わない。

でもまあ、岩手県独自の緊急事態宣言も感染者の減少に合わせて解除されたし、そろそろいいだろ、って事で先週の土曜日に久々に隣県の横手市までバイクで行ってきた。

もう早朝はバイクは寒いね、日中は気温が上がる予報だったからウェアの選択が難しい。それでも大好きな県道1号は気持ち良かった。途中の午前の休憩で自販機で買うコーヒーはもうホット一択。




目的のステーキ屋は人気店で、昼時には行列が出来る。並びたくないから開店前に着きたいなあと思って家を出たけど開店時間の30分も前に着いちゃった。店の脇にある東家でてんとう虫と一緒に開店を待つ。




旨そうでしょ?僕的には自由の味。何度も来ている店だけど、卓上の塩コショウを少しかけて食べるとなお旨い事を今更ながら発見した。また来よう。




帰り道はいつもなら国道46号を走るんだけど、そのひとつ南を東西に横切る国道107号が今土砂崩れかなんかで通行止めで、並走する高速道路が無料開放されているのを思い出しこの日はそちらを走る事に。たまにはスロットルをワイドオープンしたいしね。
Loser号はレシプロエンジンのセスナ機みたいな音を立てて、ちょうど良く前にいたペースの速いハイエースを弾除け(ネズミ取り除け)にしながら快走する。高速道路あまり好きじゃないけどたまに走ると楽しいね。




北上西インターで降り、トイレを借りたくて通りすがりのコンビニに入る。駐車場にはお揃いのバイクに乗った若い男女連れが。お、いーじゃん。
トイレから戻ると、男の子の方が僕のバイクをしげしげと眺めている。こんちわ、と挨拶したら自然と会話が始まった。これ何年式なんですか??んと、そんなに旧くなくて’93年式だよ。へーいいですね、カッコいいです!ありがとう、そちらも二人でお揃いのバイクでいいじゃん、羨ましいよ。なんて他愛のない会話だけど楽しかった。





SRのキックスタートが見たい!という男の子のリクエストに応えて衆人環視の元キック。彼はその動画を撮ってくれて、AirDropで送ってくれた。また何処かの路上で会おうね、と別れる。

そんな、疫病禍下のちょっと不自由なバイク趣味の話でした。







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