乾いたスポンジ

写真 2015-09-28 16 00 54読書家、って程ではないけれど、文章を読むのは好きな方だ。別に文学、小説の類じゃなくても、文字であれば何でも、Webにたくさん上がってるニュースだったりblogだったりちょっとした論文だったり。ペーパーであれば新聞でもいいし週刊誌でもいいし。
このご時世なので、最近は政治的な言説に触れる事が多かった。状況が状況だったから仕方がないんだけど、まあ騒がしい事騒がしい事。それこそ件の安保法案が可決されるまでは、信条的にはいわゆる「リベラル」に分類されるのだろう僕のTwitterのTLはちょっと気を抜くと未読が300ツイートとか、常にそういう状態で。僕も危機感あったから可能な限りそれらのツイートを読んで。定期的に購読しているリベラル系の雑誌は「安倍政権は違憲だ」と銘打ち総力特集を組んでたし、まあ心が休まる間も無かった。

と言うか、政局は今もって予断を許さない状況ではあるんだけど、元々が政治的な議論が好きな人間ではないので、このまま無理して根詰めていても続かないなあという想いもあって、久しぶりに文学でも読むかなあと手にしたのがトップ画の本。面白い、って話を少し前に聞いてて買っておいたんだけど、世の中がそういう状況になっちゃったから手に取るタイミングなくしてたんだよね。
熱心な読者じゃないけれど、僕は村上春樹氏の書く文章は好きだ。色んな作品に一貫して流れる氏の静かな主張が、(いい歳こいて)理想主義者を自認する僕にとっては居心地が良い。一部のリアリストの方々には蛇蝎の如く嫌われる春樹氏だけど、まあ世の中色んな考えを持った色んな人がいるのだからそれは自然な事なのだろうし、極端に賛否が分かれるというのもそれはそれで氏の作品が優れた芸術である事の証明だったりもするんだろな。

で、読み始めてびっくりしたんだけど、言葉がものすごい勢いで身体に入ってくるのね、カラカラに乾いたスポンジが水を吸うみたいに。春樹氏の文章力ってのもあるんだろうけど、読み始めた直後にその状態だったからそれは多分僕の方の問題で(小説って、その世界に入り込むまで少しタイムラグがあるのが普通)、いかに心が乾いてたんだろうって事の証だったんだと思う。物語の世界にぐいぐいと引き込まれる感覚を久しぶりに味わっています。まだ読み始めたばかりだけど、面白そうですよ、スプートニクの恋人。

…Web上でいくらでも読める、文責の無い、匿名の文字達に食傷していたのかも知れないし、僕はそもそもが争い事が得意じゃない人間だという証なのかも知れない。だし、今、文学なんてものに耽溺するのは一種の逃避なのかも知れない。
でも、こういう時にこそ芸術の真価って発揮されるものだとも思う。世の中が大きく動いている時に、自分の原点、座標軸を見失わない為の道標みたいなもの。逆に言えば、濁流に翻弄されながらも地面にしっかり根を張って動かない杭の様である事が優れた芸術の条件だったりもするんじゃないだろうか。雨が上がって水が引いた時に、そんな杭にはたくさんの漂流物が引っ掛かっている。そういう役割もあるんじゃないかと僕は思う。柔らかく、間接的にだけど少しづつ確実に、そうやって世の中って変わっていくのかな、って。ちょっと呑気かな?でもホントそう思う。

いいタイミングだし、しばらく色々読んでみたいと思っています。読書の秋って言うしね。

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2 comments on “乾いたスポンジ

  1. シラサワ

    これ見て,読みたいなぁと思って,昨日買ってきて読んだよ(遅)
    いろんな意味で仕様通りで良かったです(笑)
    春樹本,連投はムリだけど,年に何冊かは読みたいですね~

    • オレもすごく面白かったですよ、この本。
      15年位前の本らしいんだけど、登場人物がセクシャルマイノリティだったり在日コリアンだったりするのも時代の先を行ってた感がありますよね、その辺鋭いと言うか。
      このまま順当にいけば、春樹氏が描く、自分で考えて、感じて、自由意志で行動する(要は個人であれって事ですよね)ってスタンスが、10年後位にはスタンダードになってそうな気もするんですが、この人デビューの頃からこの事しか描いてないんだよなあ…(笑)
      道は険しいという事か。まあぼちぼちやります、やりましょう。

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