旅に出たい

 

日本列島は48年ぶりの寒波に見舞われているようで、盛岡も1月後半から連日真冬日が続いた。
特に早朝や深夜の冷え込みは強烈で、出勤時は毎朝マイナス10度とかいう殺人的な気温。出勤後に朝の段取りを終え、強いタバコを一服すると本当に目眩がする。
僕は基本、暑い寒いの愚痴は言わないようにしてきたんだけど(そんなん言っても仕方ないからね)、2年前くらいから冬の寒さの愚痴は解禁した。だって本当に嫌なんだもん。クルマ通りの多い幹線道路は流石に昼間は乾くけど、一本路地に入ると寒さのあまり融けない雪ががっつり積もったまま。気分転換に散歩も出来やしない。
気分転換が出来ないって、地味にキツい。別に大した重荷を背負っている訳でもハードな日常を過ごしている訳でもないんだけど、感情の淀みが心の底に澱のように溜まったままなのが自分でも分かる。めんどくさい人間だなぁ。良くないね。

 

ちなみに僕の家の前がどんな感じかというと、こう。クラウンのバンパーとの距離を見ると道路上には軽く5cm以上は硬くなった雪が積もっている。
地面がこんなじゃ、ランニングはおろか、それなりの靴じゃないと歩くのもおぼつかないんだよね。

 

 

今日の天気は晴れで寒さも幾分和らいだので、もうすぐ車検に出さなければならないSRをバイク屋さんに引き渡す準備をした。寒さからなのかバッテリーが弱っていて始動性が悪く、30回くらいキックを踏んで久しぶりにエンジンを掛けて調子を見てから、マフラーを交換したりリアの反射板を付けたり各部を軽く拭いたり。
ブリーザーフィルター、エアクリーナーも洗浄しようとしたんだけど、ブリーザーフィルターを水洗いしたところでこの寒さじゃ乾かない事に気付き、この作業は暖かくなってからする事に。
作業が終わる頃には寒さでもう限界だったけど何とかバイク屋さんに引き渡せる状態にはなったかな。

 

グラブバーも新調。これかシートにベルトかが無いと2名乗車で車検が取れない。
まあグラブバーに関しては車検云々は別にして前々から付けるつもりだったんだけど。僕のSR、荷物が全然積めない状態だったからね。
去年あたりからバイクで旅に出たい衝動に駆られていて。その準備も兼ねて、ね。

 

 

お袋が、長年住んだ家を売り払って引っ越すのだという。一人で住むには今までの家(僕の、いわゆる「実家」でもある)は広過ぎ、今後の事を考えて普段の生活にクルマが必要ない交通の便の良い所で暮らすのだと。
で、いざ物件を探し始めたらすぐにいいマンションが見つかり、今までの家の買い手も見つかり。あれよあれよという間に引越しの日取りが決まり、そんな訳で僕も月に一度くらい帰省して片付けを手伝っていた。
というか、僕の所有物も結構実家に置いてあったから。LPレコードとか、卒業証書の類とか。それらを実家に帰る度に少しづつ僕の家に運び込んでいた。

で、そんな物の中から昔の写真が出てきて。高校生の頃あたりからだね、バンドで遊んでいる時や友達と飲んでいる時のもあったけど、圧倒的にバイクの写真が多くって。
旅の写真だね、若い頃は暇を見つけてはバイクにシュラフと着替えと地図を積んでふらふらと旅をしていたから。その時に撮った写真が圧倒的に多かった。
なんかそれを眺めていたら、家に居ながらにして猛烈に旅愁をかき立てられて。一人旅って楽しいことばかりでもなくて辛かったり寂しかったりする時も多いんだけど、そういう事を含めて僕は好きなのね、一人旅が。
ああ、旅に出たいなぁ、って、写真を眺めながら心の底から思った。

 

これはどこだろう?北海道かな?多分そうだ。20歳過ぎの頃だ。
バイクはスズキのRA125。友達から1万円で買ったポンコツをコツコツ直して散々乗り倒したバイク。若い頃は金は全然持ってなかったけど時間だけはたっぷりあったから色々自分でいじったっけ。
今考えると良くやったよな、キャブレターOH、クラッチ交換、ステアリングステムのベアリング交換、ブレーキキャリパーOH、スイングアームのニードルベアリング入れ替えetcetc…
見た目はボロだったけど手間と愛情かけてたから調子は良かった。散々走り回って走行距離が5万km超えたあたりにフレームが金属疲労で折れた。それは流石に直せずに泣く泣く廃車にしたんだっけ。

 

すげえ道路だよね?これも多分北海道だと思うけど、また走りたい。走りたい走りたい走りたい。

 

これは20代半ばだと思う。転職の合間に2週間くらい北陸、関西方面をぶらぶらした時だ。携帯電話もない時代に京都駅裏で友達と待ち合わせて、戻りは2台で帰ってきたんだった。
バイクはカワサキのKMXだね。この頃ヤマハのTZR(’91だったかな?Vツイン初期型)も持ってたんだけど、低いセパハンに馴染めずやはり友達から3万円で買ったこいつにばかり乗っていた記憶がある。

 

乗鞍スカイラインだね。友達のバイクはピアジオCOSA200。標高高い道路だから2ストのエンジンが全然吹けなくなって往生した記憶がある。
信州は山なみが東北と全然違うんだよね、ギザギザに尖っているの。この撮影場所も標高2500m越えてるんじゃなかったかなあ?景色が別世界だよね。信州もまた行きたい。

 

 

仕事柄なかなかまとまった休みが取れないし、二人の子供を育てるのも大変だ。だから春になったら、なんて気軽には言えないけど、取りあえず一泊二日、二泊三日くらいのロングツーリングには出たい。バイクは8割がた仕上がってきたから、後は生活パターンだね。
上にも書いたけど、一人旅って楽しい事ばかりじゃない。特に走り込む日程を組むと、一日に一度は疲れで「俺何やってんだろう」と休憩中に独りごちる瞬間がある。
それでも楽しいんだよな、辛さを愚痴る相手も理由も無い。そもそも好きでやってんだから愚痴る筋合いじゃない。そしてそんな事を改めて自問自答する機会は悪いものじゃないんだ。ロングはバイクのひとつの、大きな醍醐味だよなぁ。

 

そんな事を、昔の、少し色あせた写真を見ながら考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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