先週から、ようやく新しい環境で仕事を始める事が出来た。

そう、僕はタクシーの運転手なんです。

で、8年余りにおける法人での修行期間を経て、今般、満を持して独立開業出来た、という訳。
別に転職という訳でもないし、今月半ばに正式に認可状を頂くまでは最後の最後まで開業出来るかどうか分からないという状況だったので、今まで奥歯にものが挟まったような言い方しか出来なかったんだけど。


僕はもともと個人タクシーの運転手になりたくてこの業界に入った。でも、個人タクシーの営業認可とは簡単に手に入れる事が出来るものではなくて。
具体的には、僕の歳であれば、法人でのドライバー経験が10年以上、申請前3年間は無事故無違反が必須。その他色々な条件があって、なかなかにハードルは高い。人の命を乗せてする仕事だから誰彼にやらせる訳にいかない、という事なんだろうけど。

だから、本当に数年来の悲願だった。特に3年前からは好きなバイクも満足に楽しむ事が出来ず、かと言って結局仕事も運転だから、常にそういう意味でのリスクと隣り合わせの日々を過ごしていた。カッコ付けずに正直に言えば、精神的にも肉体的にも辛い修行期間だった。


仕事には三揃いと地味なメガネ、オールバックでビシっとキメていく。馬子にも衣装じゃないけど、着るもの着ると変なオーラがきれいさっぱりと消えるのね、自分でびっくりするくらい。以前の僕を知っている同業者が僕と気付かないくらいの変わり様(僕、チャラい運転手だったからなー)。
フォーマル、ってこういう事なんだろうな、仕事上不必要な個性を消し、貴方と同じ世界に住んでいますよ、同じ言葉が通じますよ、という事を相手に言外に伝えるためのもの。こういう仕事には特に必要だろう。

決して安い仕事じゃないからね、こんなのは苦痛でも何でもない。毎朝仮面ライダーよろしく「へーんしん!」と呟きながら髪を撫でつけています。

オフの日はこんな感じです。新しいオーナーのもとに旅立ったクラウンワゴンと。なんか色々すみません。




それでは無事開業出来た今、毎晩さぞ旨い酒を飲んでいるんじゃないか、と思われるかも知れないけど、開業したらしたでそんな余裕なんて全然無くて。
仕事自体は基本的に今までやってきた事と変わらないんだけど、高速道路を使った長距離がメインになった。だし、如何せんそこは個人事業主、今まで会社の事務方に任せてきた事も全部一人でやらなければならない。当然年金も国民年金だし、保険も国民健康保険だ。支払いは天引きなどではなく自分でやらなければならない。
まずは今までと全く違う生活のリズムに慣れなければならないし、毎日帳簿類を付けなければならないし、領収書も管理しなければならないし、新しい環境での先輩方に行き合えば粗相のないように自己紹介もしなければならないしetc etc…。正月休みが終わった辺りからかな、心も身体も休まる事がない日々だった。今日ようやくキーボードに向かう余裕が出来た。

まあこれも慣れてくればルーティーンになるだろうな、とは思っているけど。

新しい愛車、というか、仕事のバディだね、は、クラウンセダンTSS10H。もう既に2000kmくらい運転したけど、いい事もそうじゃない事も想像通りのクルマ。奴の事は基本気に入っているけどね。
まあこれについてはそのうち別項を起こします。


そうそう、早速故障の洗礼も受けた。エンジンチェックランプが点灯したのだ。とりあえずアイドリングも安定していて吹けも悪くないので???と思ったが、早めの3ヶ月点検を受けた時に工場に診てもらったら、触媒に付くO2センサーと空燃比センサーが壊れているとの事。38万km走っているクルマなので全然仕方ないとも思うけど、修理代金は当然自腹。修理の段取り、日程調整なども全部自分でやらなければならない。当たり前だけど自営というのはそういう事。





…分かる人はものすごくよく分かると思うんだけど、「フリーランス」って全っ然自由なんかじゃないんだよね。しがらみにも縛られるし、誰も守ってくれないから最低限度の保身はしなければ生きてすらいけない。ましてや僕がやっていくのは男の意地やメンツやプライド、何よりもリアルにカネが絡む世界だ。既に何度か洗礼は受けているけど、そのマナーは内側ではフォーマルなものでは全くなく、どちらかというとバックストリートのそれだ。

それも自分で好きで入った世界、不平なんて全くない。むしろ僕みたいな人間には居心地がいい。今まで培ってきた、僕が持つ社会性みたいなものを総動員して凌いでいこうと思っています。

…仕事も路上、趣味も路上。そう、不満なんてある訳がない。思い返せば物心ついた時から路上に恋い焦がれてきたんだ。
スマートフォンで見ている人は分からないかな、このblogには”For the people who want to go somewhere, not here!”というサブタイトルが付いている。「ここではない何処かへ行きたいあなたへ」という意味で、20年前にWeb上に文章を書き始めた時以来気に入って使っているキャッチなんだけど、何処かへ行きたいのは他でもなく自分自身だという事は自覚している。

死ぬまでこのままいくんだろうなー。まだ終わっていないけど、なかなか楽しい人生だったよ。

今やほとんど投稿する事もなくなってしまったFacebookだけど、こういう人生の節目の挨拶は流石にしなきゃな、という事で、開業した旨を知人友人に報告したポストに沢山のリプライを頂きました。
学生の頃からの古い友達が「まだまだこれから二転三転するから。そしてそれが楽しいんだよ」という言葉をくれて。そうだね。全くその通りだ。
そんな最近のBGMはこの曲以外にない。ベタだけど。

ディラン先生の“How does it feel?”との問いには「まずまずかな」と答えておきましょー。